第3章 開き直られました
「それとハルカ。夕食は済ませたね?」
「あ、はいです」
「それは、良かった」
スティーブンさん、ネクタイを外して椅子に放り、大きく伸びをする。
そしてジャケットをハンガーにかける私を振り向き、
「ハルカ」
ちょいちょいと指で招く。
なので、わたくし、腕で己が身を抱きしめ、
「エッチ」
「こらこら。ご期待には応えたいけど、さすがに今日は寝るよ」
そこまでガツガツしてない。大人だなー。
「では今日はお口でしますか?」
「――――っ!!」
冗談を言ったら、番頭さんの顔が瞬時に赤くなる。
「ハルカ!! どこでそんなことを覚えたんだ! ま、まさか、君、変なバイトを――!?」
険しい顔をして詰め寄られかけたので、
「いやいやいや。ね、ネットで知って」
「…………」
スティーブンさんは深々とため息をつき、私の額をコツンと叩く。
「全く。冗談が過ぎるぞ、ハルカ。大人をからかうんじゃない」
でも一呼吸置き、咳払い。
「あ……いや、でも。も、もしかして、本気で、そういうことに興味があると言うのなら……」
いやチラチラと私を見ないで。
「すんません。超冗談です!」
「……そ、そうか。そうだね。そうだよね。は、はは……」
「ははははは……」
ヤバい。疲れ切った大人にこの手の冗談は酷だったか。
「でもご希望でしたら、そのうちにでも……」
「分かった。じゃあ『次』教えてあげるよ」
予約されたーっ!!
戦慄している間に、長ソファに手招きされた。
「座って座って」
「?」
先にソファに座るように指示され、疑問符を浮かべながら座る。
すると。
「はあ……」
スティーブンさんがソファに横になり、私の膝に頭を乗せる。膝枕!!
……て、重! 成人男性の頭って結構重い!
でも私はスティーブンさんの頭を撫でた。
今日はホントに疲れてるみたいだったから。
「ハルカ……褒めてくれる?」
チラッと私を見上げる恋人。
なので私も、優しい笑顔で頭を撫でた。
「えらいえらい。スティーブンさん、超えらい。世界一カッコいいです」
「うーん……イマイチだなあ。もっとグッと来る言葉、ない?」
「語彙(ごい)が貧弱で、申し訳ございません!!」
……注文の厳しい雇用主であった。