第3章 開き直られました
その後、私は玄関までお見送りした。
「数時間しか寝てないんでしょう? ホントに疲れが取れてるんですか?」
「大丈夫。君の力のおかげで、ぐっすり眠れた」
呪いのイイトコ取りとか、ズルいなあ。
で、玄関前でもう一度ハグをして、キス。
「いってくるよ、ハルカ」
「いってらっしゃい、スティーブンさん」
手を振り、扉が閉まるのを見届ける。
「ふう……」
リビングに戻りながら、小さくあくび。
「食べ終わったら、もうちょっと寝よう……」
うう。恋人は朝早くからお仕事だというのに自堕落な。
でも『あの後』、何回かつきあわされ、正直未だに疲れが取れない。
「その後、皿洗いして、掃除して……終わったら散歩に行こうかな」
やることが決まったらホッとする。
空白はいつだって、怖い物だ。
リビングのドアを開けると、当たり前だけど誰もいない。
スティーブンさんの椅子にも、もちろん誰も座ってない。
「…………」
不思議だ。誰かがいないことを、寂しいなんて思ったこと、なかったのに。
「スティーブンさん。早く帰ってこないかな」
出かけたばかりだというのに。
ベーコンエッグにフォークを突き刺しながら、ため息をついた。
…………
…………
スティーブンさんは、深夜の時間になってから帰ってきた。
「おかえりな――だ、大丈夫ですか!?」
お出迎えのハグをした私は目を丸くした。
出発時を100とすれば、今は5くらい。
彼はそれくらい疲れ切っていた。それどころか、
「お怪我を!? だだ大丈夫ですか!?」
服越しだが、包帯を巻いている箇所がある!
パニックになり、どうしたものかと慌てるが、
「ありがとう。でも君が心配することは何もない。良い医者に適切な治療をしてもらったから」
笑顔になり、私にキスをした。
その冷静な声に、こちらも落ち着きを取り戻す。
でも、なぜケガをしたのか。いったいどういう仕事をしているのか。
きっと教えてはくれない。
「ハルカこそ、良い子にしていたかい?」
いつもと変わらない仕草でジャケットを脱ぎながら聞いた。
「もちろんです。屋台のサンドイッチとクレープとジュースとタコライスがめっちゃ美味かったです」
「……まあ、買い食いもほどほどにね」
苦笑された!