第3章 開き直られました
前回までの極めて詳細なあらすじ。
ヘルサレムズ・ロットで見つけた、初めてのお仕事を奪われました。
しばらくはスティーブンさんと一緒に過ごすのがお仕事だそうです。
そして例の茶番劇の後。
その後、スティーブンさんと目が覚めたクラウスさんと三人で高級レストランに行った。
呪いがあるから店に入れないと、最初私は断ったけど、そこらへんは大人のエスコート。
二人はちゃんと先方に断りを入れ、厨房から離れたお座敷を取ってくれた。
料理は素晴らしく美味しかった!
その後、クラウスさんとも連絡先を交換し、無事に解散となった。
「ありがとうございましたー」
スティーブンさんの家の前で、ギルベルトさんの運転する車に、手を振る。
「さ、中に入ろう、ハルカ」
「はい!」
腰を抱かれ、スティーブンさんのご自宅への階段を上がる。
空はすっかり真っ暗だ。
月の見えない霧の深い街。でもいつしか、そんな風景にも慣れつつある。
そして玄関を開け、家に明かりがつくと何よりホッとする。
色々バタバタしたけれど、無事に帰ってこられて本当に良かった。
スティーブンさんのいるこの家に、いて良いということが、嬉しい。
そういうわけで、私は部屋の前でそそくさと、
「色々ご迷惑をおかけしました、スティーブンさん。それでは部屋の荷物の整理がありますので私はこれにて――」
「ハルカ?」
手首をしっかりとつかまれた。
「あーれー」
廊下をズルズルとリビングに引きずられていく。
「うお!」
そしてリビングにて盛大にスイングされ、ぶんっとソファに投げられた。
ボフッとクッションの間に身体が沈む。
あ、危ないなあ。バウンドしてテーブルにぶつかったらどうする!
「DVっ!!」
指さして非難するが、スティーブンさんは片手に何か持って、スタスタとソファに来ると、
「ぐぇ!!」
私をソファに挟むようにドサッと座る!
横から脱出しようとするが、巧妙に体重をかけられ、逃げられない!
「スティーブンさーん!……ん?」
ハムスターのごとくジタバタしていると、何やらアルコールの芳香がした。
いったいいつ取ったのか、スティーブンさんがグラスにお酒をついでいるところだった。
とりあえず私は必死に手を伸ばし、グラスに『はあ~』と、呪いの気を送った。