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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第3章 開き直られました



「…………ハルカ」

 パッと室内の明かりがつき、顔を真っ赤にしたスティーブンさんが現れる。

「その、私の呪いって、疲れてる人にほど、有効らしくて……」

「分かった。でもクラウスから離れてくれ。色々と、耐えられない」

 へいへい。

 とりあえず釘はさしといた。

「呪いの有効活用とか、止めて下さいね。どうしても効きが不安定みたいだし」
「そのようだ。少し残念ではあるけど」
 スティーブンさん、やはりお疲れ顔である。けど、

「……ハルカ。君に頼みたい仕事がある」
「はい?」

「僕を寝かせてほしい」
「え?」

 スティーブンさん、そっと私の両手を取る。

「……クラウスでも嫌だったよ。
 触れても触れなくても、君がその力を誰かに使うのは」

 いやだから、能力じゃなくて呪い……もういいや、何か面倒になってきた。


「君と一緒に眠りたい。
 眠るときも、目覚めるときも、君が隣にいないと……嫌だ。
 あんな思いは、二度としたくない」


 さて『あんな思い』とはどんな思いであろうか。
 心当たりが多すぎて分からない。ドキドキ。

 そしてスティーブンさんは、そっと私を抱きしめる。
 壊れ物を触るように。

「僕も君を安心させてみせる。馬鹿なことは二度と考えない」

 その『馬鹿なこと』とは私を殺すことか、社員社畜化計画か。

「君を傷つけること全てだよ」

 フッと笑う。読まれてました?

「だから、そばにいてほしい」
「スティーブンさん……」

 顔を上げ、見つめ合う。私たちの間にある氷の壁が、春の到来により溶けていく。

 私も、私も本当は離れたくない!
 今こそ伝えたい。
 不安定な関係を終わりにしたい!
 
 
「――お金をあげるから」
「…………は!?」

 私は固まった。

「? 仕事がしたいんだろ? お金が欲しいんだろ?」
「はあ?」

「とりあえず清掃と安眠の仕事をしてもらう代わりに、毎日、お小遣いをあげるから。だから出て行かないでほしい」
「はあああっ!?」

 前言撤回。やっぱ凄まじい断裂が存在する。
 わかり合えてるように見えて――カケラもわかり合えてない、私たちはっ!
 

「というか、そろそろクラウスさんの縄を解いてあげませんか?」

 私の呪いの効果で安眠するクラウスさん。
 ものすごくシュールであった。

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