第3章 開き直られました
スティーブンさん、朝から何やってんだっ!!
クラウスさんも止めて下さいよっ!!
あかん。羞恥と照れの波状攻撃で、ビルから飛び降りたい!!
「……もういいや。フリでもいいから、もう寝て下さい」
クラウスさんに懇願する。
するとクラウスさんは私をジッと見、
「ミス・ハルカ。一つ良いだろうか」
「あ、はい」
「以前お会いしたときに比べ、貴女もスティーブンもひどく憔悴(しょうすい)しているように思える」
「え!? いや、そんなことは……」
前回会ったとき。スティーブンさんと買い物中だったっけか。
スティーブンさんは楽しそうで、それを見ている私も楽しかった。
あれから、きちんと(?)コクられ、初めて身体を重ねて。
――でも互いに別の方向を向いている気がする。
ギクシャクしてる。
「私で良ければ話を聞かせてほしい。私にとってスティーブンは大切な友人だ。もちろん、その友人である貴女も」
…………。
クラウスさん。スティーブンさんに打ち合わせそっちのけでノロけられ、未だに私たちが単なる友人同士だと思ってる……?
超鈍感なのか、スティーブンさんの話術がすごいのか。
でも、認めざるを得ない。
スティーブンさんのストレスの原因は、私が心配させてるからだ。
私は、スティーブンさんが好きだ。
離れるのは辛い。
「特に悩みという悩みがあるわけでもないんですが……」
お互いが『本来の自分に戻らなければ』と焦りを感じていたのだ。
スティーブンさんは、元の冷徹なご自分を。
私は誰にも興味のない、元の普通な自分を。
いずれ破綻する恋だと思っていた。
でも、そうではないのだとしたら?
この気持ちを表す言葉は、何だろう。
「クラウスさん……あ、あの、私、スティーブンさんが、好き、みたい、です……」
いや何言ってんだ自分、と思ったが。
でもクラウスさんは微笑んでくれた。
「それが貴女の素直な気持ちなら、スティーブンにそう伝えるべきではないだろうか」
ホッとする。認めてもらえた。これでいいんだと思えた。
「クラウスさん……、ありがとうございます!」
自分の気持ちがハッキリ分かって。嬉しくて、クラウスさんに抱きついて――。
「あ」
「…………」
クラウスさん、即寝した。