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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第3章 開き直られました



「ふむふむ。そこに人を自在に熟睡させられる存在がいたら。短時間睡眠で、長時間睡眠並みの休息効果を与えられるとしたら!」

「その通りだ、ハルカ。活用しない方法はないだろう。
 君がいれば、部下をいくらでも働かせることが出来る」

 ブラック企業ブラック企業ブラック企業ブラック企業ブラック企業ブラック企業……!

 頭の中で恐ろしい単語が反響する。
 普段のスティーブンさんと違うスティーブンさんがおる。
 悪魔! 氷の悪魔が降誕した!!

 ……普段とあまり変わらないな。

 スティーブンさんは笑顔で、
「ハルカ。今、失礼なことを考えなかったかい?」
 私、ブンブンと、首を超高速で左右に振りました。

「で、それとクラウスさんがここにいらっしゃることと、何の関係があるので?」
 と、縛られたクラウスさんを指さした。一方クラウスさんも、
「スティーブン。それは本末転倒というものではないだろうか。
 私は何もそこまで皆を――」
「心配するなよ、クラウス。あくまで非常時。やむを得ない場合の緊急措置だ」

 いや絶対嘘だ!! 笑顔が爽やかすぎて、超うさんくさい!!

「それと、スティーブンさん。誤解をされてるようですが、私の呪いは触れて無くても発動しますよ?」

「それは知っているよ。ただ触れていない場合、入眠までかかる時間は?」

「一、二時間かけて、ゆっくりジワジワ効いてきます」

 あー、それなら意味ないか。

「そういうことだよ、ハルカ。君の能力は不確定かつ不安定すぎる。だからこそ調節の必要がある。
 まずは、そこにいるクラウスを眠らせてみろ」

「いや能力じゃなくて呪いだと何度言えば。というか調節出来たら、それ、呪いがひどくなってるってことじゃないっすか?」

 だがスティーブンさんの目は、すわっていた!

「全ては君の安全と、社内の労働環境改善のためだ。協力してくれ、ハルカ」
「いや改悪! 凄まじいまでの改悪ですから!」

「頑張れ。君の幸せを願う僕を信じてくれ。ハルカ」
「一片たりとも信じられねえわっ!!」

 全力でツッコミを入れたが、スポットライトが消え、スティーブンさんの気配も無くなる。
 
 ……同時に、暗闇の中に私とクラウスさん二人きりという、非常に気まずい状況になった。

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