第3章 開き直られました
「いりません!」
お金を突っ返し、にらむ。
「……自分でちゃんと稼ぎたいんです」
お情けや施しじゃなくて。
「!!」
彼がドンッと私の肩近くに手を置く。
一瞬、殺されるんじゃないかと思った。向けられたものは殺気に限りなく近かった。
「本当に思い通りになってくれない子だ、君は」
顔を近づけてきたので目を閉じる。
「開発のしがいがありそうだ」
え? 今、何て言った!?
だけどキスをされ、それどころじゃなくなった。
…………
…………
ここは真っ暗な部屋。
どこからかスポットライトが投げかけられ、そのライトの中に一人の男が立っている。
そう、スーツを着たスティーブンさん。
彼は、冷静な声で話す。
「ハルカ。君の呪いは100%解呪不可と断定されたわけではない。
だが、そうそうすぐに、安全に解呪させる方法が見つかるわけでもない」
「はあ」
というか、ここはどこだ。気がついたらここにいた。
「そして、まっとうに金を稼ぎたいという、君の切なる願いを叶えたい気持ちもある」
「はあ」
「そこで『人を安眠させる』能力の活用だ」
「……はあ」
だからアレは呪いであって、能力じゃないっつうに。
「寝たいなら睡眠薬とか飲めばいいじゃないですか?」
「睡眠薬は『薬』だけあって依存や過眠等、相応のリスクがある。
その点、君の能力なら副作用はないし時間調節も出来る」
私がリスクを肩代わりしてますからねー。
「実際、ブリゲイドを尋問……もとい話を詳しく聞き、念のため健康調査をした」
「今、尋問って言いました!? スティーブンさん!!」
「君の呪いによる二時間の睡眠で、何と七時間睡眠に相当する疲労回復効果を確認した」
聞けや人の話。
「だが現時点で問題は一つある。対象に触れないと、その呪いが発動しないらしいことだ」
「ところでスティーブン……」
暗闇の中から声がする。そしてスポットライトがも一つ追加された。いや誰だよスポットライト係。
椅子に縛られたクラウスさんであった。
「なぜ私がここにいるのだ。そして君の話は興味深いが、今はミス・ハルカの方が睡眠が必要な状態ではないのかね?」
うん。私、ソファでグッタリしてる。
夜明けの光が見えるまで寝かせてもらえなかったもんなー。