第3章 開き直られました
結論から言えば、バイトはその場で辞めさせられた。
スティーブンさんは、真っ青になって慌てる店長の真横に、絶対零度の靴を蹴り込んだ。
店長さんは身体を半分凍らせ、ブルブルしながら私の退職に許可をくれたのだった。
私は着替えもそこそこに、襟首引っ張ってズルズルと外に連れ出された……。
「スティーブンさん~」
外は夕方。車の方に引きずられていく。
彼のお仕事は、どうやら早めに終わったらしいが……。
「最後の給料なら払ってあげるから、安心しなさい。僕のポケットマネーからな」
ぞっ。
スティーブンさんのモノすごい笑顔に、背筋が凍りついた。
…………
外は夜のお時間であった。
簡単な夕食を外で取った後、、私はスティーブンさんのおうちに連れ戻された。
で、ものすごいお説教をされた。
「あんな店で働くなんて危険すぎる!! 変な客につきまとわれたら、どうするんだ!
性的なサービスだって、脅されて強要されるケースも十分ありうるんだぞ!」
スティーブンさんはガミガミと叱り続ける。
どうやらブリゲイドさんは、スティーブンさんの部下だったらしい。
それに加え、レオナルドさんからも情報が行ったらしい。
「いえ、でも私の常春の呪いの効力で、皆さんすぐ寝ちゃいますし……」
リビングのソファで正座しながら、私はもごもごと言い訳を口にするが、
「君は自分の呪いの力を過信しているようだが、そんな低レベルな呪い、あっさり無効化する奴は、この街にいくらでもいる!
逆に君が眠らされて、その間に大変なことになったらどうするんだ!?」
ガミガミガミ。
どう反論しても怒られる空気だったので、後はソファで正座して、ひたすらに耐えた。
そしてスティーブンさんはようやく説教し終え、
「……君はちょっと厄介な呪いを背負ってるかもしれないが、ごく普通の子だ。
自分から裏路地に入るより、この家の掃除をして、のんびり過ごしてくれた方が僕は嬉しいよ」
ちょっと声を和らげ、かがんで私にキス。
大きな身体を抱きしめると、ギュッと力をこめて抱きしめ返される。
そのままソファに、横抱きにされた。
いや落ちる落ちる落ちるっ!
「ハルカ」
首筋に顔をうずめられ、耳元で名前をささやかれる。
でもゾッとするほどに低かった。