第3章 開き直られました
彼はキョロキョロと、落ち着きなく私の仕事部屋を目にし、
「あー、二時間くらい時間が取れたんだけど、公園のベンチで寝るのも何だと思って。
そうしたらこのビルの看板がたまたま目に入ってな」
……聞く前からベラベラと言い訳をしている。
だから、風俗店じゃないってのに。
「ご主人様、よろしくお願いします♪」
私は制服姿で、いそいそとベッドにお連れしようとしたら、
「未成年か? 普通の子に見えるけど、何でこんな店で働いてるんだ?」
ん? 若い子に説教するのが好きなタイプか?
「実は元観光客なんですが、この街から出られなくなっちゃって――」
ビクビクしつつ簡単に説明すると、
「……くっ。そんなひどい話が、本当にあるのか!」
説教はされなかったが、かなり同情された。
そこまで壮絶に不幸なワケでは……。
そしてブリゲイドさんも即寝であった。二時間後に無事に起きた後は、
「公園のベンチよりは良かったな」
と何でもない風に言っていたが、監視カメラの死角で、私の手に何かを握らせた。
「これで何か美味い物でも買って食べな」
100ゼーロ札であった!
「ありがとうございます! ご主人様!」
「いいってことよ。また来る――ん?」
私の頭を撫でてた、ブリゲイドさんのスマホが鳴る。
彼はすぐスマホを取り、
「スカーフェイスか……俺は仮眠を――ああもう十分寝た。すぐ作戦に復帰出来る。
いや本当だって。人を安眠させる呪いにかかってるって子がいて、その子に手伝ってもらってな――」
人を安眠させる呪いって何すか。それ、ただの便利な能力じゃん。
そして彼は電話を切って『じゃあな』と帰られた。
その後、しばらく次のお客さんは来ず、私はベッドルームでだらだらして過ごした。
そして夕方、ようやく店長が、
「ハルカちゃん。ご指名来たよ。すぐ入室だから」
「はーい!」
慌ててベッドを整えた。
そしてドアが開き、お客様ご入室である。
私はモコモコパジャマ姿で全開の笑顔。
「おかえりなさいませ、ご主人様♡」
「ただいま、ハルカ」
「――――っ!!」
凍りついた。
スティーブン・A・スターフェイズが、爽やかな笑顔で立っていた。
「それとオプションR追加。僕の家で」
足下から、壮絶な冷気が立ち上っていた……。