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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第3章 開き直られました



 そういうわけでお仕事開始である。

 最初のお客様と二番目のお客様は、どちらもベッドに入った途端、私の呪いの効力で即寝。
 お客様が起きるまで、私はのんびりゲームをやってた。
 どちらにも『あー、ぐっすり寝た』と、ご満足いただけた。
 呪いのせいとはいえ、これだけ働いた気がしないバイトも珍しいな。

 お客様をお店の入り口までお見送りしてから戻ると、

「ハルカ。店長が、休憩行っていいってさ」
 フロアで、トレイシーという先輩女性が煙草吸いながら言った。

 背中ガラ空きの真っ赤なキャミワンピ。風俗嬢ですかって格好だが、実際に娼館で働いてたらしい。
 どこぞの褐色銀髪とガチバトルをして、前の職場を飛び出したとか何とか。

「ではお先に休憩いただきます」
 頭を下げて行こうとしたが、

「結構深いとこまで浸食してる。ちょっとヤバいんじゃない?」

 煙草吸いながら、トレイシーさん。

「え……」
 思わず振り返る。
 彼女はバナル何とかって呪術族の人らしい。
 私の呪いが見えるのだそうな。

「薬は飲んでます」
「侵食を遅らせるだけだよ。呪いは今もあんたの内側に食い込もうとしてる」
「……。この呪い、行き着くとこまで行き着いたら、死ぬんですか?」
 呪術族の人なら、病院の先生も知らないことを知らないだろうか。

 トレイシーさん、二本目の煙草に火をつけながら、
「別に死なないよ。素人が遊びで使うような呪いだしね」
 ホッとした。しかし遊びとか腹立つなあ。
「呪いが心臓や脳まで食い込んで、一生、解呪出来なくなるだけ。まあ今の時点でも成功率一割以下だけど」

マジか!! 

「で、でも解呪の可能性はゼロでは無いんですよね!?」

「解呪以前に、だいたい食中毒で死ぬけどね」
 こ、このパイセンっ!!

 すると奥から店長さんが、
「トレイシーちゃーん! ご指名入ったよ! オプションRねー!」
「はーい! じゃね、ハルカ」
 煙草をもみ消し、背を向けるトレイシーさん。
「お、お疲れです」

 ちなみにオプションRとは、性的なサービスを意味する。

 ……ここ、添い寝カフェだけど、ほとんど娼館じゃね?
 オプションRをやってないの、私だけだし。

 だんだん勤めてるのが怖くなってきた。

「あ、休憩時間、休憩時間」

 私は上着を羽織り、店の外に出た。

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