第3章 開き直られました
スティーブンさん、コホンと咳払いし、
「ただし、メインストリート以外は絶対に歩かない。声をかけられてもついていかない、知らない人からもらった物を食べない。
何かトラブルがあったらすぐに僕に報告。電話が通じないなら――」
以下略……子供のおつかいか!!
そしてスティーブンさんは玄関先に来、お見送りの私をハグする。
「顔、上げて」
素直に顔を上げると、自然に唇が重なった。
「ん……」
唇を舐められたから、そっと口を開けると、舌が入り込んでくる。
「……ん……ぅ……」
二人で抱き合い、しばらくそのまま、深いキスをしていた。
あの、長いんですが……。
「…………ん」
やっと離してもらい、酸欠でぐったりして、スティーブンさんにもたれる。
出がけにこんなマジなキスをする人がいるか!
スティーブンさんは笑って、私の背を叩く。
「じゃ、何かあったら僕に連絡するように。いってきます」
「いってらっしゃい」
ちょっと低い声でお見送りし、ドアが閉まるのを見る。
「さて」
お仕事場の開店は昼前だ。それまでお皿を洗って、掃除機をかけて。
「よし、頑張ろう!」
…………
そしてバイト先の添い寝カフェに来た。
異界人の店長さんは、ご機嫌である。
「ハルカちゃん、二日目だし、慣れてきた?」
「はあ、まあ」
寝てるだけでお金がもらえるんだもんなー。よく考えたら天職じゃね?
「じゃあ今日はもう少し稼げることをしてみない?」
異界人の店長さん、バックヤードからゴソゴソ何かを持ってくる。
衣装の入った箱だった。
「はいこれ、お客さんがオプションで指定する衣装。昨日のよりちょっと、きわどいけど」
「……ちょっと……?」
昨日着たのは、メイド服やら普通のパジャマやらだった。
だがこれは……下着が見えそうなミニスカ、肌の露出度が高すぎる『なんちゃってメイド服』やエロゲのコスプレ制服、とどめにビキニまであるんすけど!
「すみません、まだ二日目だし、こういうのは……」
きわどい服の数々を手に取り、わなわなと震えた。
健全そうな店かと思ったが、全然そうじゃなかった!
「オプション料金の二割は、君の日給に追加するから♪」
「喜んで着させていただきますっ!」
金の前に、人のプライドとはかくもモロいものであった。