第3章 開き直られました
なので、私は手を上げる。
「あ、私もお仕事がありますので外出許可がいただけましたら」
「却下。仕事は辞めなさい」
「そんな上からな!」
「上からにもなるさ。いったい、どんな仕事を見つけたんだ?
このヘルサレムズ・ロットで君みたいな子が仕事を見つけた?
十中八九だまされているか、水商売だろう」
返答を聞きもせず決めつけんで下さい。
で、で、でも添い寝カフェは水商売にあらず!
…………たぶん。
「だ、大丈夫ですよ、ただの接客業ですから」
「ふーん」
明らかに興味のない感じの返答だった!
さっさと食べ終わり、スティーブンさんはテーブルを離れ珈琲メーカーのスイッチを入れる。
私は呪いの効力が及ばぬよう距離を取りつつ、テーブルを片付けた。
スティーブンさんは淹れ立ての熱々珈琲を飲みながら、
「お金が欲しいなら、僕に言いなさい。お小遣いをあげるから」
「いえ、自分で稼ぎたいので」
「稼いでるだろう。この家のハウスキーピング代」
あんな素人の掃除で金をもらうとな。
「……あと、僕のお相手代?」
いや、それ援助何たら! 色々シャレにならないからっ!!
あわあわしていると、プッと吹き出す声。
「冗談だよ。君は色々ままならない身なんだし、僕の勝手でこの家にいてもらってる。少しくらいはあげるよ」
朝刊を手に取りながら言う。
「了解いたしました。では前借りで500ゼーロほど下さい。豪遊してまいります」
「1日3ゼーロ」
「子供のお小遣いっ!?」
…………
その後、スティーブンさんはスーツを着込み、出発のご準備だ。
もしかして、この家に閉じ込められるのかと戦々恐々としていたけど、アッサリと鍵を渡された。
「スマホの道案内アプリは使っていいから。この鍵は指紋認証キーも兼ねてるから、セキュリティはこれで通れるよ。
それでも帰り道が分からなくなったら、人類(ヒューマー)経営のバーガー店にでも入って、僕に連絡を入れなさい」
おお、閉じ込める気はないみたい。ホッとした。
「出来れば家にいてほしいけど、あいにくと、そこまで犯罪に走る気はなくてね。
相手の意志を無視した過度な束縛は、趣味じゃ無いんだ」
いやあ、どうだかなあ。