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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第3章 開き直られました



「行くぞハルカ」
 氷の悪魔が、私の襟首引っつかんで、ズルズルと引きずっていく。
 相変わらずドアは氷に覆われていたが、スティーブンさんが何かするとバンッと開いた。
 そして私たちは風の冷たい外へ!

「レオナルドさん! 助けて下さい! レオナルドさんプラスαー!!」
 涙ながらに、必死に叫ぶが無情にもドアは閉められた。
 アパートのドアの向こうからは、

『プラスα? 微妙に滑ってねえか?』『他一名って表現の方がまだ良いですよね』
 くそ! ウケを狙ってツッコミどころを入れるんじゃなかった!
 それでも、彼らが私を助ける気を起こしてくれまいかと、耳をすましたが、

『壊れたアパートのドア代、明日スティーブンさんに請求していいんですかね?』
『知るか。あーあ、動画撮っときゃ良かったな。女絡みの醜態なんてネタ、三年はいじれたのに。
 まあいいや、モンハンやろうぜ。ピザ注文しとけ、陰毛頭』
『だから自分でやれって……デラックスとチキンコンボスペシャルでいいっすか?』
『ミートギガ盛りとコーク忘れんなよ』『了解っす!』
 ドライだなぁ、男共!!

「ピザぁーっ!!」
 私の悲痛な叫びが響くが、

「あきらめろ。だいたい彼らは明日に全休を控えている。
 徹夜でゲームパーティーをしようってときに、出てきたのは冷えて固くなったピザとチキン。
 人生でそこまで、みじめな状況があるか?」

「ううう……」

「レオナルドは言うに及ばず、ザップも何だかんだで女に甘いから、君に合わせるだろうな。
 だがさぞかし、場は盛り下がるだろう。
 そう。君は冷えた物を食わせることで、周囲の人間にのべつまくなしに、ダメージを与え続ける運命なんだ」

「いやあああああっ!!」

 本当、嫌な呪いだな! 死に至る病気じゃないけど、じわじわと精神を削ってくる!
 スティーブンさんはフッと笑い、

「あんな奴らだが、昼は人身売買組織相手に大奮闘してくれた。
 彼らに温かいものくらい、食わせてやれ」

 私をずりずり引きずり、階段を下りていく。
 私はしくしく泣きながら、

「でもですね、恐らくというか多分――それ、あなたが言い出したご計画なんですよね?
 そもそも、そんな危険な作戦を実行された理由は何なんです?」

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