第3章 開き直られました
普通、他の男の存在がチラついた時点で捨てるだろうに。
何だかんだ言いつつ、何から何まで心配してくれて、スマホまで……何て良い人なんだろう。
「機能は通話、メール等の連絡用アプリのみに制限してある。異議は?」
「……ございません」
…………
そして、スティーブンさんは私が頼んだ場所で下ろしてくれた。
あとは距離が離れて、冷静になるのを願うのみだ。
「スティーブンさん。重ね重ねありがとうございました。でも私、本当に一人で大丈夫だし、彼も良い人なので、これ以上は――」
スティーブンさんが運転席から、指でちょいちょいと手招きするので『?』と顔を近づけた。
唇が重なった。
「……!!」
「あとで連絡する。それじゃあな」
片手を上げ、車を発進させた。私は呆然とそれを見送り、深く脱力してため息をついた。
…………
…………
「ハルカ!! どこに行ってたんだよ!!」
扉を開けるなり、レオナルドさんが大声を出した。
『キキ!』と鳴いて、ソニック君も私の頭に飛び乗った。
「あんまり帰りが遅いから、もしかして誘拐されたんじゃないかって、今からザップさんと探しに行こうと思ってたんだ!」
ザップ……? どこかで聞いたような……。
「ンなダルいこと、するわけねえだろ!」
ソファから粗暴な声が聞こえた。行儀悪く、テーブルに足をのっけた褐色の男が顔を上げる。
私と目が合うとニヤッと笑い、レオナルドさんに、
「ずいぶんとチンチクリンなの捕まえたじゃねえか。まあ陰毛頭の記念すべき初カノにはお似合いかあ~? で、どこまで行ったんだ?」
……すごいあだ名つけるなあ。
レオナルドさんは、
「ザップさん! そんなんじゃないって、ずっと言ってるでしょ!!」
「はあ? 女を一つ屋根の下に住まわせといて、何もねぇワケねえだろ!! それともアレか? レオナルド君はアレなのかあ!?」
「アレって何だよ! ケチつけるなら、とっとと帰れよっ!!」
「帰るわけねえだろ! 今日はモンハ○パーティーすんだろ? おい、ピザの予約はしてあんのか?」
「自分でしろよ、それくらいっ!!」
私はソニック君を頭に乗せたまま、ぎゃあぎゃあ言い合う二人をしばらく見――笑った。