第3章 開き直られました
そしてまた、たっぷりとキスを貪った後、スティーブンさんは言う。
「嫌がっても、無理やりに連れて行くと言ったら?」
「ま、待って……スティーブンさん……」
「ハルカ……僕は……」
抱き寄せられ、もうどうしていいか分からなくなった。
そのとき、スマホの着信音が鳴った。
「!!」
我に返り、バッとスティーブンさんから離れた。
「スティーブン」
一方、スティーブンさんは数秒前の出来事など無かったと言いたげに、スマホを取っていた。
ジタバタする私の腰を抱き寄せ、かたくなに逃亡阻止しているが……。
「ああ、クラウスか。うん、すまない。ハルカは無事に見つかったよ。ケガは無い。
君を巻き込んですまなかった。協力に感謝する」
待て、スティーブンさん。クラウスさんに話したの!?
「……そう言ってくれると助かるよ。しばらくは、またうちで保護することになると思う」
既定事項みたいに言ってくれる。
「分かった。ギルベルトさんにも礼を伝えておいてくれ。君にもまた借りが出来――ははは。冗談だよ。冗談。ああ、何かあれば、ちゃんと君にも相談する。ではまた明日」
と、スマホを切る。私はジタバタしていたが、先ほどの妖しい雰囲気は、すでに霧散していた。しかしスティーブンさんはめげずに、
「……で、ホテルに行く?」
「行くわけないでしょうが!!『覚醒遮断』で昼まで寝かしますよ!!」
「ははは。それは困ったな」
とっとと体勢を立て直す。
大人なんて嫌いだっ!
結局、スティーブンさんは早朝に、クラウスさんと打ち合わせの予定が入ったそうだ。
ご自宅に連行されそうになったが『彼氏が心配するから!』と強硬に押し切り、やっと解放されることになった。
でも、それだけでは終わらなかった。
…………
車内で待っていると、スティーブンさんが店から出てきた。
「ハルカ。これを持っていてくれ」
渡されたのはスマホであった。
「いりません。ご厚意はありがたいですが、こういうのは……」
「必要だろ? 帰りが遅くなっても、君の『彼氏』を心配させずに済むし、フラれて行き場がなくなったら、僕にすぐ連絡が取れる」
言葉のトゲがすっごいなっ!!
「……本当にありがとうございます……」
でも受け取ることにした。