第3章 開き直られました
ともあれスティーブンさんは大人の男性だ。まして本命彼女もいる(と思う)。
女を他の男に寝取られ、みっともなく食い下がるほどガキではあるまい。
色々迷惑をかけたけど、最後にあいさつが出来るのは良かった。
私は立ち尽くすスティーブンさんに深々と頭を下げ、
「スティーブンさん。こんな私のことを気にかけていただき、探して下さったこと、本当に感謝しています。とても嬉しいです。
私は今、幸せにやっていますし、何かあっても自分で対処していきますので。
もう大丈夫ですから。今まで本当にありがとうございまし――」
「どんな男だ? どうせ君をだましているに決まっている。会わせろ。僕が直接話をつける!」
ガキだった!!
「あー、い、いや、その……」
レオナルドさんの顔がチラッと脳裏に浮かぶ。
あかん。直接対話させたら、絶対に押し負ける。
それどころか、ホントのことをポロッとしゃべりそうな気がする。
そうしたら、私はスティーブンさんの家に連行コースだ。
というか寒いな、本当に寒い。ぶるぶるする。
顔色を悪くして震えていると、スティーブンさんがハッとしたように、
「……すまない。君は自分の気温に慣れていたんだったな」
自分の気温って何だ。でもスティーブンさんに手を引っ張られる。
「とにかく、夕食を取ろう。話はその後だ」
そういえば、時刻もお夕飯時だ。お腹が鳴る。
私は手を引かれ、氷に閉ざされた路地裏を後にした。
…………
私は高級車の助手席に座っている。そこで、スティーブンさんがテイクアウトで持って来てくれたサブウェイのサンドを貪った。
「で、ですから、いつまでも『彼』には頼らず、いずれはアパートを借りて一人で住もうかと。
その後は、まあ薬代を稼ぎながら、何とか呪いを解く方法を探して――」
「このヘルサレムズ・ロットで女の子が一人暮らし? 何を馬鹿なことを言っているんだ」
即答であった。
「言っておくが、この街の連中には家の鍵なんて、有って無いような物だぞ?」
徹頭徹尾、不機嫌である。
「そもそも、具体的にどんな仕事をしているんだ?」
……何か、上司から報告を求められている心地であった。
てか私の選択全てにダメ出しする勢いである。
いや、どんな仕事だろうと文句を言いそうだ。絶対言う!