第3章 開き直られました
「男と暮らしている……? 君が病院を出て、たった数日だぞ!?」
スティーブンさんは目を見開いて凍りつき、それから猛然とまくし立てた。
「い、いや! いつだ!? いつ出会ったんだ!?
どうせろくな男じゃないんだろう!? いったい何を言われてだまされた!?」
なので私は目をそらし、だがはにかむ(ふり)をして、
「病院から出た後、チンピラに絡まれた私を助けてくれたんです。
とても親切な人で困った私に、家に来なさいと……とても男らしかった」
ま、まあこれも嘘では無い。レオナルドさんは親切だし、(多分あの『目』を使って)ならず者どもから助けてくれたときは、確かに男らしかった。
ただ私の言動を、スティーブンさんがどう解釈したか。
「男の家に二晩も泊まって……。男……らし……」
「ええ。とても」
私は頬に手を当て、『きゃっ♡』とワザと含みを持たせる言い方をする。
チラッとスティーブンさんを見ると、伊達男がログアウトした呆然としたご様子。
さながら『あと五分で世界が滅びます』と言われたかのような顔だった。
「い、い、いや、いいんだ、ぼ、僕はそんなことは気にしないっ! そんな些細なことにこだわる男じゃないからな!!」
声の動揺が、話の中身を裏切ってますがな。
まあ実際にこだわってるかはさておき。横から現れた男に、面倒を見てた小娘をかっさらわれて、気分の良い殿方はいないのだろう。
「だけどハルカ、断言する。君の同意があろうと、この街にいて、女に気軽に『自分の家に泊まれ』という男にろくな奴はいない!!」
「……あの、豪快にブーメランを投げてらっしゃると思うんですが」
「君も君だ。困ったからと言って、得体の知れない男にほいほいついて行くんじゃない。
男なんてどう豹変するか分からないんだぞ!」
「相変わらず都合の悪い件はスルーしますよね。
あと、あなたがどの口で仰るんです」
『豹変』については同意だけどレオナルドさんのことは、もう少し信用してもいいんじゃないかなーと思ってる。
だがスティーブンさんは見るからに不機嫌そうに舌打ちし、
「僕の言葉が頭に入らないようだな。そんなに、そいつが気に入ったのか?
たかが命を救われたくらいで、出会ったばかりの男が、僕より『いい』、と」
……色々と含みのある物言いですな。