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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第3章 開き直られました


 
 でもスティーブンさんは手を離す。そして沈痛な面持ちで、うつむいた。

「今回の件は、完全に僕の過失だ」

「は?」

 スティーブンさんは顔に手を当ててる。ギリッと歯を食いしばり悔しそうに、
 
「例えどんな些細な呪術であっても、徹底的に調べるべきだった。
 専門医にかからせ、可能な限り早い段階で解呪するべきだったんだ」

 ああ。先生から話を聞いて、知ってしまったのか。
 私の解呪が手遅れになったこと。
 これ以上悪化させないために、一生、薬を飲まなければいけなくなったこと。

 ……これらの理由により、ヘルサレムズ・ロットから、出られる見込みがなくなったこと。

「スティーブンさんには関係の無いことですよ。
 背負わないで下さい。私は踏ん切りがついたし、今はちゃんと――」

「関係あるっ!!」

 怒声に、私は立ちすくんだ。
 彼は氷の柱に、こぶしを叩きつけた。ヒビが……入った。


「なぜ僕に何も言わなかった!! どうして一言も相談をせず、勝手に消えたんだっ!!」


 氷がビリビリと震えるほどの叫びだった。スティーブンさん、マジギレしてる。
 あと寒いんですが。私、自分の春体質に合わせて、最近薄着だったからなあ。
 
「いえその、これ以上ご迷惑をかけるわけに行かないと思いまして……」

「君が僕のいないところで、ヒドい目にあったり、殺されたりする方が迷惑だ!
 この数日、部下まで巻き込んで君を捜し回って、どれだけ苦労したと思っているんだ!」

 えー……。

「おしおきは後だ。とにかく、一旦帰るぞ、ハルカ」
 スティーブンさんが私の手首をつかむ。
 でも私は歩かない。

「……ハルカ」
 私が動かないので、スティーブンさんは苛立たしげに振り返った。

「もしかして、僕の一時期の言動が君を不安にさせているのか?
 あいにくと、今はそういう段階じゃ無い。僕が信用出来ないのならクラウスを呼んでもいい。
 とにかく、一緒に来なさい。君の今後のことを二人でよく話し合おう」

「スティーブンさん。今後のことは、自分でどうにかしてるんで、大丈夫です」
「何?」
 思いっきり、疑わしげなスティーブンさん。

 なので言った。

「私……私、今、男の人と一緒に暮らしてるんです!!」

「――――!?」

 ええと、嘘は言ってませんよね?



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