第3章 開き直られました
いつぞやのように、床に座り身体に毛布を巻く。
明日はソファを移動させてもらおう。
レオナルドさんは布団にくるまりながら寝言を言っていた。
「ミシェーラ……無理、すんな……兄ちゃん……頑張る、から……」
やれやれ。故郷の妹さんと同一視されてるみたいだ。
普通すぎ、善良すぎ、とても安心するけど。
「でも、やっぱりいつまでも頼ってはいられないですね」
頼るのが怖いのかもしれない。
どんなに優しい人でも、何のきっかけで豹変するか分からない。
私はそっと目を閉じた。
…………
翌日は、初仕事であった。
仕事場は雑居ビル。
仕事内容は、ミニスカだのパジャマだのメイド服だのを着て、お客さまと添い寝。
ドキドキしたけど、トラブルや嫌なことはゼロであった。
何せ一緒にベッドに入り何秒も経たないうち、どんなスケベそうな顔をした客も寝てしまうのだ。
さらには私の『覚醒遮断』能力もあり、たいていの客は規定時間以上に寝てしまう。
異界人の店長さんは大喜び。仕事が終わる時間になって、
「皆、熟睡出来たって、満足してたね。はい、お給料。
でもホントにオプションサービスはやらないのかい? うちは良心的な店だから本番禁止だし、歩合給だから稼げると思うよ?」
「い、いえ、それはさすがに……」
苦笑いし、最初のお給料を受け取った。
おおお! 研修期間ということを除いても、結構入ってる!!
「お疲れさまでしたー」
「はい、お疲れ。明日もよろしく」
初めて稼いだお金に、誇らしさすら感じ、ウキウキと店を出る。
たった一日だけど、まだまだ危ない橋を渡っている自覚はあるけど、この街で生きていく展望が一気に開けた思いだった。
「そうだ。レオナルドさんに、何か買ってこう!」
明るい気分になり、通りのウィンドウを眺める。
その途中で物件屋を見かけ足を止めた。
「あと引っ越し先も探さないと……どういうアパートが安全かな」
店頭看板の安物件を眺めている。
そのとき、後ろで急ブレーキの音がした。
「ん?」
大きな音に、思わず顔を上げ振り向く。高級車だ。
ボーッと見てると、バタンと運転席のドアが開き、誰かが出てくる。
「ハルカ!!」
「……え」
スティーブンさんだった。