第5章 君の計算を狂わせたい
予想していなかった人物の登場にしばし固まっていたが、すぐに隣から舌打ちが聞こえた。
「山崎くん!?」
「チッ、今回の仕掛けは一段と凶悪だな……花宮はやく逃げよう」
「まて古橋、お前ほんとに越智さんへのあたりがきついな」
「あ……古橋くんと花宮か」
ここまで走ってきたのか、まゆりの肩が上下している。
「ねえ、山崎くん見なかった?」
「俺達は見ていないですけど……そんなに急いでどうしたんですか?」
「途中ではぐれちゃって」
気が合うのかまゆりと山崎は合宿中二人でよく喋っていた。
まゆりの口ぶりからすると今回の肝試しでもペアになったのだろう。
意図せず舌打ちがもれ出そうになって飲み込む。
「こっちに来てないとすると途中でわき道に入っちゃったのかな……ありがとう、それじゃあ」
「おい待て!」
まゆりが踵を返そうとしたので慌てて肩をつかむと、きょとんとした表情の彼女と目が合う。
こいつまさかこんな暗い森の中を一人で探しにいくつもりか?
馬鹿なんじゃねえの?
「ザキのことは原にでも探させればいいでしょう」
「でも山崎くんこういうのかなり苦手そうだったからほっとけないし……花宮は原くんに知らせて! 私はもうちょっとその辺探してみる!」
「あ、おい!」
忠告も無視して走っていくまゆりに今度こそ舌打ちがでた。
「あんのクソ馬鹿。古橋、お前は原と連絡をとれ。俺はあの馬鹿を追いかける」
「花宮!」
古橋の呼び声も虚しく花宮まで暗闇へと消えてしまい一人取り残される古橋。
仕方なくスマホを開くが、上のスクロールバーには圏外のアイコンが表示されていた。
「……花宮」