第5章 君の計算を狂わせたい
*****
視界の悪い森の中、花宮は心中ため息をついていた。
先ほどから髪の長い女や自分の頭を脇に抱える落ち武者など、まさにお化け屋敷にいそうな面々に何度も追いかけられているのだが、原が用意したのであろう仕掛けがいちいちリアリティのあるもので変に神経がそがれる。
森の中に入ってから辺りを覆っているこの薄気味悪い霧も原の仕業なのだろうか。
少し肌寒く感じて二の腕をさすれば隣を歩く古橋が素早く反応した。
「花宮寒いのか!? だったら俺があたためて……」
「いや、大丈夫だ」
「……そうか」
何となく身の危険を感じてすぐに断れば古橋はシュンと肩をわずかに下げた。
遠くで悲鳴が響く。
おそらく後続の部員のものだろう。
今さっき自分たちが体験したものを思い返して花宮は心の中で同情をした。
最後の仕掛けを受けてからそこそこの距離を歩いている。
そろそろ次の仕掛けが来てもおかしくはないだろうと気を張りなおしていると、後ろからタッタッタッと急ぐような足音が響く。
「次は何だ? ゾンビか? ガイコツか?」
「今のところ和物できてるからな。日本人形あたりが予想としては無難だろ」
足音のする後方へとライトを向けると、視界の悪い暗闇から現れたのは携帯のライトを構えたまゆりだった。