第5章 君の計算を狂わせたい
「あ、ごめん……」
私が謝ると、あのと山崎くんが改まったように言う。
「俺が出しゃばることじゃねえのは百も承知なんですけど……まゆりさんって花宮のこと……その、好きですよね」
「えっと……そんなに分かりやすかった?」
「わかりやすいっていうか、そうなのかなーって」
まさか山崎くんにそんなこと言われると思っていなくて驚く。
山崎くんは今までせき止めていた言葉を溢れさせるように早口で続けた。
「ほんと俺がこんなこと言うのもあれなんですけど、花宮は……やめといた方がいいと思います。あいつ彼女のこととか絶対に大切にしないし。今まで見てきた女の子達見てきたんで分かります。だから……だったら、俺に……」
「山崎くん?」
真剣な表情で山崎くんが見つめてきた時だった。
ざっざっと地面を引きずるような不穏な物音が茂みの中から聞こえてきた。
私達は固唾を飲んで顔を見合わせる。
「ねえ、ワタシの……足、知らない……?」
突如として這いずってきた黒髪の女性が茂みから顔をのぞかせる。
「ぎゃあああああああああああでたあああああ!!!」
「ひゃああああああ、ちょっと待って、待って山崎くん!!」
普段のトレーニングを存分に生かしたような猛ダッシュで逃げていく山崎くん。
ちょっと待ってよ!
ライト持ってるの山崎くんだけなんだから置いていかれたら私殺される!
私はすでに見えなくなりそうな明りを慌てて追いかけた。