第5章 君の計算を狂わせたい
「——で、けっきょく原が先生にめちゃくちゃ怒られて……ってほんとあいつはろくでもないことしかしねえな」
考え事をして上の空になっていたら、いつの間にか話は今回の肝試しを提案した原くんの話に変わっていた。
話題は原くんから霧崎第一のメンバーの話へ。
そして花宮と私の出会いの話へと変わっていく。
「そういえば、まゆりさんと花宮ってどうやって知り合ったんすか?」
「原くんの魔法で花宮が私の世界に来ちゃったんだけど、その時に花宮が飛ばされた場所が私の家の中だったの」
「とんでもない話っすね」
「ね、ほんと同意」
「でもそっか……まゆりさんとは明日でお別れなんすよね」
山崎くんは呟くようにそうこぼした。
私と彼らではそのままの意味で住んでいる世界が違う。
原くんが私を呼び出したことによって、こうやってお互いの世界に干渉しあっていることがイレギュラーなんだ。
明日になって、原くんに元の世界に戻してもらって……。
そうしたら、私の方から再び彼らに会うことはできない。
こういう時に真っ先に思い浮かぶのはいつだって花宮だ。
あの日花宮が私の家に現れて、私の世界は広がった。
彼との記憶は鮮明でこれから先一生忘れることはできないだろう。
花宮の事を思い浮かべる。
いつだって不機嫌そうに眉をよせて、大事な本音はいつだってみえない。
あの日の最後の時、花宮と思いが通じたと思った。
だけど再会するとまた彼の心は見えなくなってしまった。
今回の合宿だって何で私の事を呼んだの?
私がただ使える奴だから?
でも、花宮は私にバスケ部の事なんか考えなくていいと言ってくれた。
「まゆりさん?」
私が黙ったからか、心配そうに山崎くんが名前を呼ぶ。