第5章 君の計算を狂わせたい
夏の夜ではあるけど、半そででは少し肌寒いと感じるような涼しい風が通っていた。
真っ暗な道の中心を山崎くんがもつ懐中電灯で照らすことによってかろうじて足元がわかる。
じゃりじゃりと音を立てながら歩いていると、なんだかあたりが霧がかってきたような気がする。
さっきから肌寒かったのはこの霧のせいか。
真っ暗で視界は悪いけど、だんだんとこの暗闇にも目が慣れてくる。
そうすると隣を歩く山崎くんの表情もなんとなくだけど見えるようになってきた。
みると、彼の顔は極度の緊張からかずっとはりつけたような笑みを浮かべていた。
「山崎くん、もしかして心霊系苦手?」
「え、いや、まさかー」
「セリフ棒読みだし、それにさっきから顔が大変なことになってるよ?」
さっき私とペアになるのに躊躇してたのはこういうことだったのね。
もしかしたらこの肝試しにも参加しないでおこうとか考えていたのかもしれない。
私が声をかけてしまったばっかりに……ごめんね。
「あーやっぱダサいっすよね、こういうの苦手って」
「そんなことないと思うよ。私も幽霊とか得意なわけじゃないし」
「わーまゆりさん! その単語禁止! あいつらってそういう話によってくるんだって!」
山崎くんはくわっと目をむくと真剣な顔でこちらを見てきた。
そもそも話をふってきたのは山崎くんの方じゃ……。
そう思ったけど、あまりの気迫に私はごめんと素直に謝る。
「気がまぎれるように何か話してていいっすか」
「どーぞどーぞ」
なんだか山崎くんの新しい一面を見た気がするな。
いつもの印象はどちらかと言えば飄々としてて、癖の強い霧崎第一の面々とも臆せず話してる強面の子って感じだから、お化け系苦手って意外。