第5章 君の計算を狂わせたい
「えーっと……」
たしかに花宮おばけとか信じてなさそうだけど。
頼もしいと言えば頼もしいけどさ。
私は体調を崩した時のことを思い出す。
あの切迫したような執着するような黒い瞳は今でも鮮明に脳裏に焼き付いていた。
花宮は私の事どう思っているのかな。
この合宿が終わって、花宮は私との関係をどうするつもりなんだろう。
この肝試しでペアになれば彼の心の内も聞くことができるだろうか、と花宮を見ると、花宮も同じように私に視線を向けていた。
そして口を開いて……。
「そうだな、俺は……」
「待て、花宮は俺とペアを組もう! さあ行くぞ!」
突然私と花宮の視線を遮って現れた古橋君は、そう言って花宮の腕を強引につかむ。
そしてあっという間に二人は夜の森へと消えていった。
古橋くんの早業に、私と花宮のやり取りに注目していた部員たちはもちろん。
あの花宮もあっけにとられたようにしていた。
「まさか第三の刺客が現れるとはな……」
「まゆりさんどんまい」
「そういうこともあるって」
「なんか私がふられたみたいになってない?」
その反応は心外なんだけど。
けっきょく花宮は古橋くんといってしまったし、さて誰と行こう。
再びさまよわせた視線はこんな暗い夜中でも目立つオレンジ髪の彼で止まった。
「あ、山崎くん! ねえ、一緒に行かない?」
今回の合宿では山崎くんにもずいぶんお世話になった。
主に精神面で。
せっかくだしと声をかけると、山崎くんからは少し歯切れの悪い返事をされる。
「まゆりさん。んーえっと、ああー……じゃあ一緒に行きましょうか?」
「もしかして他にペア組みたい人いた? だったら無理しなくても……」
「いや、そういうわけじゃ! むしろ野郎ばっかの中でまゆりさんと行けるとか役得っすけど」
山崎くんはその後もんーとかあーとか何か悩んでいるようだった。
しかしすぐに決心したように顔をあげると、行きましょうかと暗がりの方に視線を向ける。