第4章 本当の気持ちはどっち?
「一年から聞いてんだよ。あいつらがためてた洗濯物回してたんだろ」
「え、なんでそれ花宮が知ってるの?」
「越智さんが忙しそうにしてたのと、一年の様子がおかしかったんで。問い詰めたらすぐに本当のことを言ってくれましたよ」
今は特別メニューをやらせてる、と花宮は付け加えるように言った。
私と一年生の態度を見てそこまで気づけるものだろうか。
花宮は色んなことに敏すぎると思う。
花宮がいら立ったようにため息をついた。
さらりとした黒髪をくしゃりとにぎる。
「そんな体調崩すほどバスケ部につくすことねーんだよ。高校生の部活なんて遊びの延長みたいなもんなんだから」
「でも霧崎第一ってバスケの強豪校なんでしょ? みんな真剣に練習してるって……」
「遊びですよ。将来プロのバスケプレーヤーになるわけでもない。暇つぶしみたいなもんだ」
「花宮……?」
なんだか花宮の様子がおかしい気がして私は横たえていた体を起こす。
視線を落としていた彼はいらだったように小さく舌打ちをこぼした。
「お前は俺に呼ばれてここに来たんだろ、だったら俺の作った予定通り仕事しろよ。バスケ部のことなんか考えなくていい、他の奴の頼まれ事なんかで体調くずしてんなよ」
ぎろりとこちらをにらむ黒い瞳と視線がぶつかって思わずそらした。
その瞳に独占的な熱がこもっているように見えて驚く。
「ご、ごめんなさい」
思いもよらない花宮の反応に、私は声が震えないようにそう答えるので精いっぱいだった。
「とにかく、今日は一日休んでてください。あとで食事はもってきます」
それだけ言うと花宮は部屋からでていった。