第4章 本当の気持ちはどっち?
ジャグに水を入れてスポーツドリンクの粉を入れて混ぜる。
昨日と同じ工程なので間違えることはない。
「重い……」
昨日の彼は軽々もってたのにな。
でもまあ考えてみればこのジャグの中に10L入ってるわけだし、ここまで重いのも納得。
やっとこさ重いジャグ二つを運んで時間を確認すると次の工程まではまだ時間があった。
ちゃんと破綻しないような計画が立てられているところに花宮の監督としての才能の片鱗を感じる。
余った時間は何をして過ごそう。
ちょうど試合形式の練習をしているみたいだし、皆のプレーでも見ていようかな。
なんて考えていると部員の一人に呼び止められた。
「まゆりさーん、ちょうどいいところに。アイシング道具一式知らない? 何か見当たんなくてさ」
「アイシング道具?」
「あーそっか、アイシングって普通の人知らないか。えっとクーラーボックス見なかった?」
「クーラーボックスなら確か……ちょっと待ってて、今持ってくるね」
記憶を頼りに探せばすぐに目的のものは見つかった。
これであってるのかな?
中身を見てもあっているのかよくわからない。
アイシングってことは冷やすってことだよね?
ってことは氷とか入ってるし多分これであってると思うんだけど……。
不安に思いながらもっていくと、どうやら私が持ってきたものは彼が求めていたものだったらしい。
「ありがとーまゆりさん、助かったわ……」
クーラーボックスの中からいくつか手に取った彼はちらりと私の方をうかがうように見る。
「……うん、ありがとね」
数秒何か考えるようにじっと見つめていると、彼はふたたびお礼を言ってもとの笑顔で去っていった。
今の変な間はなんだったんだろう。
いや、それよりも考えるべきなのは、私のバスケの知識のなさだ。
アイシングって何?
っていうかバスケ部のマネージャーって何するの?
よくよく考えれば、私ってバスケのことを全然しらない。
体育の時の知識程度しかない。
そりゃあそうだ、今まで運動部に所属したこともなければスポーツに興味があったわけでもないし。
でもマネージャーとして皆を支えることに専念できるのは私だけなんだから、できるだけのサポートはしたいよね。
後でちゃんと調べないとな……。