第4章 本当の気持ちはどっち?
合宿所から外に出るとあい変わらず強い陽射しが肌をやいた。
蝉の鳴き声も相まって蒸し暑いが、少し歩いたところにある体育館に入れば外よりもっとひどい熱気が私を迎え入れた。
「49、50! はい、もう一本!!」
ホイッスルの合図に合わせて40といる部員たちが走り出す。
キュッ、キュッとシューズが音を鳴らし、部員たちの汗が床にたれた。
私は邪魔にならないように二階の観覧スペースに移動した。
熱気がすごくて動いていないのに私まで汗がふきでる。
「ダッシュお疲れさまでした! 水飲み休憩のあと3 on 3です!」
そのかけ声とともに部員たちは脱力したように壁側に用意してあったボトルに口をつけ始めた。
代わりにモップを手にした部員が今度は体育館をかけまわる。
意外だったのはそれらの指示をしていたのが花宮じゃなかったこと。
クリップボードを片手に笛で合図していたのは確か一年生の子だったはず。
それに今モップをかけているのも一年生の子達。
花宮を探してみると水を飲んで小休憩をしていた。
マネージャー業務は一年生にまかせられるように練習が体系化されているのだろう。
花宮も選手なわけだし練習する必要がある。
しかしその仕組みを監督である花宮が作っているのだから、やっぱり花宮はすごいと思ってしまう。
「わあ、すごい……」
やがてはじまった三対三の小試合は体育館内にて数グループ行われはじめたのだけど、その内の一つに目がとまる。
手元でボールをバウンドさせる花宮にじりじりと距離をつめる山崎くん。
キュッと足を前後に動かすと、山崎くんが大きく手をのばしたタイミングで花宮は後ろにボールを放った。
そこには瀬戸くんがいて、ボールはすぐさまかけだした花宮に再び戻る。
ボールを奪わんと駆け寄る原くんに気づいた花宮はゴールからかなり離れた位置でシュート体勢にうつる。
「うわっ、今の入っちゃうんだ……」
シュパッと気持ちいい音とともにボールはリングをくぐった。
それからすぐさま攻守交替するように山崎くんがボールをつき始める。
皆すごい。
信じられないくらい素早く動くし、一瞬で判断して相手の意図していないところにボールを投げる。
投げた先には当然のように味方がいて。
バスケの試合なんてテレビでもちゃんと見たことなかったけど、私は暑さも忘れて夢中になった。
