第4章 本当の気持ちはどっち?
「はあ……」
私は廊下を歩きながら大きなため息をついていた。
昨日のバーベキュー、あれはやっぱり大事件だったのだ。
悲しいことに事件の余波として部員の私を見る目が変わってしまった。
部員たちにとって花宮はいい意味でも悪い意味でも大きな存在だったようで、その彼女なのだとわかると今まで気軽に挨拶してくれてたおとなしそうな部員の子達がそろって目をそらすようになってしまった。
私の癒しだったのに。
逆に直接からかってくる人もいて、それはそれでうっとうしい。
「はあ…………」
「あれ? まゆりさん?」
落としていた視線をあげると目がチカチカするようなオレンジ髪が飛び込んでくる。
「山崎くん」
「大きなため息なんてついてどうしたんですか……ってそんなの聞かなくてもわかるか」
「いやー、あはは」
「あの……昨日あれから大丈夫でした?」
山崎くんが少しためらうように、でも心配そうにこちらをうかがってくる。
「あれから……あー、うん! 大丈夫大丈夫!」
「本当っすか? 結局バーベキュー戻ってこなかったし、花宮に何かされたんじゃ……」
「いや、本当に大丈夫だったから! 昨日は疲れちゃったみたいで寝落ちしちゃったんだよねー!」
ごめん、山崎くん。
この話題はあまり掘り下げてほしくないんだ!
君が言うように昨日、何かありまくっちゃったから!
なおも山崎くんは不安げな表情でこちらを見てきたけど、私が大丈夫を連呼するとしぶしぶ納得してくれた。
「そうだ、気分転換にバスケの練習見に来てくださいよ」
「あ、それ行きたい! 時間空いたら絶対行く!」
体育館に行くのはいい気分転換になりそう。
前から行きたいと思ってたしね。
山崎くんは待ってますねと言うと去っていった。
昨日の出来事があって変に態度を変えないで接してくれるし、私の心配までしてくれる。
山崎くんって改めて考えてみても優しいよなあ。
彼が勧めてくれたこともあるし、今日の昼過ぎに体育館に行ってみよう。