第1章 再会ってはやくない!?
目の前に花宮がいる……。
どうしよう、いろんな感情で言葉に詰まる。
何で急にいなくなったの。
私のことなんかどうだってよかったの。
ううん、言いたい言葉はこんな彼を責めるような言葉じゃなくて。
「久しぶり花宮、会いたかったよ」
会いたかった。
あの別れはしょうがないことだったと納得する一方で、叶うことならあのまま花宮と一緒にいれたらという気持ちが心の奥底にいた。
その気持ちは花宮も一緒だよね?
と彼の目をじっと見つめると、ふいっと視線を逸らされた。
…………あ、あれ?
「……この人が越智さん?」
私が首を傾げていると目の前で咳き込んでいた男が呼吸をととのえ終わったようで顔をあげた。
短いオレンジ髪がトサカのように逆立っている。
「なんか思ったより……」
「普通だ」
「だから言ったじゃん、普通の子だって」
「だって花宮のお気に入、んん……何すんだよ!」
花宮が素早くオレンジ髪の男の口を覆った。
その視線は相変わらず鋭い。
視線だけでトサカ頭くんを殺してしまいそうだ。
ほら口を覆われた顔が青ざめていってる。
とりあえずその手を離してあげよう?
うーーーん?
私としては花宮との感動の再会にめちゃくちゃ心躍っていたんだけど、もしかしてそういう感じじゃない?
私はもう一度大きく首を傾げる。
いまいち状況が呑み込めていないので改めて部屋を見渡してみることにした。
12畳ほどの空間に簡易な長椅子が数脚。
壁の一面にはよく学校で使われてそうな金属のロッカーがびっしり。
雑多に散らかった物達を見てとってもザ・部室って感じ。
バスケットボールも転がってるしバスケ部の部室なのかな?
そういえば花宮はバスケ部の部長をやってるって言ってたっけ。
この部屋には花宮をあわせて五人の男の子がいた。
花宮と、今もなお花宮に口をふさがれているオレンジ髪のトサカ頭くん。
それを近くで見ながら爆笑してる紫髪くんといっさい表情を崩さない黒髪短髪の無表情くん。
それからあと一人、それらのやり取りにまるで興味がなさそうに離れた椅子に腰かけている長い黒髪の男の子がいる。
というか彼、興味がないどころか寝てる?
みんな花宮の友達なのかな?
なんか仲良さそうだし……同級生?
それにしたって個性豊かな面々だ。