第1章 再会ってはやくない!?
「ただいま~」
玄関扉を開けて鍵を靴箱の上に置く。
屋内に入ったからといって暑さはなくならない。
日差しの熱さから、蒸し暑さに変わるだけ。
私はすぐに窓を開けた。
風が通れば多少は涼しくなるだろう。
冷房はつけない。
最近は節約がマイブームだ。
マイブームというより、金欠といった方が正しいかもしれないけど。
でも工事か……工事が始まったら、音が気になって窓を開けていられないかも。
うーん、困った。
冷蔵庫から取り出した麦茶を飲みながらそんなことを考える。
工事はいつからだって書いてあったかな……。
確認しようと、テーブルの上に置いた紙に手を伸ばした時だった。
ぼふんと音がたって、ピンク色の煙が辺りを覆う。
「えっ、ちょっとなんなのこれ!?」
咄嗟のことに、まともに煙を吸ってしまって咳き込む。
ゴホゴホと呼吸を繰り返していると、目までしみてきて、その感覚に少し懐かしさを覚えた。
これってまさか……。
そんな、嘘でしょ……?
だって、彼は帰ったはずで。
もう一生会えないはずで。
だったら、なんでこの煙が……。
こんがらがる思考に反比例するように、周りの音は鮮明になってくる。
「ちょっ、原、なんだよこの煙!! 聞いてねーゲッホゴホ、息、苦し……」
「越智さんは……まだなのか?」
「ん~もしかしたらもう来てるかも。いっぺん煙飛ばしてみる」
数人の男の会話が聞こえると、スーッと周りの煙が引いていく気配がした。
瞑っていた目をそっと開けると、私は息をのむ。
周りの景色がまるで違った。
ここは……私の部屋じゃない。
だけど、そんなことは今の私には問題じゃなかった。
目の前の男達。
その中の一人に目が釘付けになる。
「……花宮?」
眉根を寄せながら、口元に手を当てていた男……。
見覚えのある顔。
忘れられなかった顔。
花宮は、私をなんとも言えなそうな表情で見つめる。
だけど……
「……久しぶりですね」
そう言うと、彼はわずかに口角をあげた。