第3章 変革は意図して起こされるもの
一種の催しが行われているかのような異様な盛り上がりの中、「あ、あの……!」と第三者の声が上がる。
見ると、この前私に彼氏うんぬんと尋ねてきた男の子だった。
「花宮先輩とまゆりさんって……どういった関係なんですか?」
「すげえ、こいつ聞きやがった!」
「うおお、いいぞー!」
花宮はゆっくりと、艶然とした笑みを浮かべる。
なんだか少し開けられた間が芝居がかっているようにも感じる。
「恋人だけど?」
部員たちからいっそうの歓声があがる。
「でも! いとこって言ってたじゃないですか!」
「いとこ同士の結婚が法律で禁止されてるわけでもないだろ。何か問題が?」
花宮に勇猛に挑んだ男の子は膝から崩れ落ちた。
そんな男の子へお前は頑張った、よくやったと慰めの声があちこちからかかる。
……なにこれ?
これ、なにかの催しもの?
バーベキューの時間にレクリエーションとかあったっけ?
「花宮、あの、話についていけないんだけど……」
「ああ、すみません、僕らの関係は隠していようって話していたのにバラしてしまって……でも僕我慢できなかったんですよ。このままだと越智さんが誰かに取られてしまうんじゃないかって気が気じゃなくて」
どこか説明口調にも感じるような言葉をつらつらと一息に言い切ると、花宮は私が両手に持っていたトレーを勝手にとって手近なテーブルの上に置いた。
そして私の肩をわざとらしく抱くと部員たちに視線を回す。
「それじゃあ彼女も混乱していることだし、俺らは少しの間ぬけさせてもらう。皆はバーベキューの続きを楽しんでくれ」
「あ、ちょっと! 花宮!」
花宮は私の手をとると、建物の中へすたすたと進んでいった。
二人がいなくなったバーベキュー会場は盛り上がりに盛り上がっていた。
「ひーーー!! 花宮ほんっと最高!!」
「あいつは役者でもめざしてるのか?」
「俺は認めない俺は認めない俺は認めない……」
腹を抱えて大爆笑している原。
呆れ顔でため息をついている瀬戸に、呪いの言葉を垂れ流している古橋。
三者三様のリアクションをしているメンバーの中、山崎は不安そうな表情で建物の方を見つめていた。