第3章 変革は意図して起こされるもの
白い発泡スチロールを彩るように敷き詰められているのは大量の肉の赤。
彩りを添えるように野菜や海鮮系などもある。
「こっちに大量にあるメイン肉が牛カルビと牛肩ロース。あとはウインナーと野菜はひと通りスーパーでそろえて……海鮮系だとエビ、こっちのイカは焼きそば用です」
「……これ御手洗先生が全部買ってきたんですか?」
「いやあ、このへんで買いそろえるのは大変でしたよ。合宿自体が急に決まったことだったので、事前に用意する暇もなくて」
いつもの控えめなしゃべり方をしていたけど、珍しく御手洗先生の口元は自慢げにあがっていた。
そんな表情をしてしまうのもわかる。
先生が持ってきた発泡スチロールの箱は全部合わせて6箱。
これを全部そろえるのはそうとう骨が折れたんじゃないかな。
「先生すごいですね……! ここのところ忙しそうでしたけど、これを買いに行ってたからなんですね」
「まあこれもありますし、それ以外にも花宮くんに色々お願いをされてしまいまして」
花宮という名前に反応してしまいそうになって私は口を閉じる。
それに気づいたのかはわからないけど、先生は「さて、さっそく準備しましょうか」と軍手を取り出した。
先生が火を起こしている間に私は野菜などを片っ端から切っていく。
しばらくして作業が終わって、切った野菜を持って外のバーベキュー施設に行くと、もう部員の皆が煙の中で騒がしくしていた。
「あ、まゆりちゃんきたきた!」
いちはやく私が来たことに気づいたらしい原くんが声をあげる。
「もう皆はじめてたんだ!」
片手に紙皿もう片手には割りばしスタイルの部員たちが囲む鉄板からは、ジューと油のはねる音と共に香ばしい煙が立ち上っている。
「はやくしないとなくなるよー、そんな野菜なんか置いてはやくこっちおいでよ」
「置いてって……野菜も食べなきゃダメだよ」
原くんの隣にいた花宮がふいに振り返って割りばしをこちらに突き出してきた。
箸の先端には今焼きあがったらしいカルビ肉がつままれている。
「越智さんはもっと肉を食べたほうがいいですよ。痩せすぎなんで」
花宮が箸をつきだしたままこちらをじっと見てくる。