第3章 変革は意図して起こされるもの
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「うん……」
まぶしい光を感じてぼんやりとした心持ちで体を起こした。
さわさわとした涼風が髪の隙間を抜ける。
竹を編んだような茶色のクローゼットが視界に入って、はてと私は首を傾げた。
それから数秒して思い出す。
そっか、バスケ部の合宿にきてるんだっけ。
「…………今何時!?」
慌ててスマホで確認すると朝の6時だった。
「はぁ~~~、焦ったあ……」
朝食の時間は9時からだ。
よかった、この時間なら間に合う。
昨夜たしかにすごく疲れていたけど、まさかアラームもかけずに寝てしまうなんて私アホすぎる……。
「…………ん?」
てか私、昨日どうやって寝た?
思い出そうと頑張ってみるけど昨日食堂で夕食を食べ終わったあたりから記憶がない。
私は嫌な予感がして着ていたTシャツの襟口をつかんで鼻に近づけた。
「くさい! うそ……私お風呂も入らずに寝ちゃったの……?」
今から急いでいけば皆に会わずにすむ……!
高速でお風呂セットを抱えると私は浴場へ駆け込んだ。
お風呂からあがり廊下を歩いていると山崎くんとばったり会った。
彼もちょうど朝シャワーをしていたらしくオレンジの髪をタオルでワシワシとこすっていた。
「おはよう! 山崎くんもお風呂入ってたんだね」
「おはようございます。俺、朝風呂入んないと目覚めないタイプで。そういうまゆりさんも風呂はいってたんすね」
ええ、私は昨日風呂に入らずに寝るという大失態を犯してしまったのでね。
なんて本当のことを言えば女としての何かが壊れそうだったのであいまいに笑って返す。
「それにしてもこの後すぐ練習だよね、霧崎高校のバスケ部って練習多くない?」
「そうっすか? インターハイ狙ってるとこはこのくらい普通っすよ」
事もなげにさらっと返す山崎くん。
すごいなあ。
昨日もここに着いてから夜までずっと練習してたし、学生時代部活に本気で取り組んだことがない私からすると尊敬してしまう。
体育館に向かうと言う山崎くんに頑張ってねーと声を掛けると、去り際にドギマギドした動きでオウと手をあげてくれた。
うん、あの子絶対いい子だ。