第2章 合宿生活はじまります!
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部員たちと入浴をすませた後、ふと気が向いてひとり食堂に足を向かわせた。
終わりそうになくて俺に泣きついてくるのをもくろんで、まゆりには時間ギリギリに終わるか終わらないかくらいの仕事量を与えている。
そのことを考えれば、すでに21時を回っている今も食堂にまゆりがいることは十分にありえる。
予想通り食堂の電気はまだついている……どころか食堂の机に突っ伏して寝ているやつがいる。
あれ、どうみてもまゆりだよなあ。
思わずため息をつく。
「こんなところで寝てると風邪ひきますよ」
近づいて声をかけてみるが起きない。
「越智さん?」
顔のすぐ横で声をかけてもまるで起きる気配がない。
気持ちよさそうにスースー寝息まで立てている。
こいつ全然おきねーな。
これがバスケ部員だったら蹴り起こしているところだが、さすがに女にまで暴力をふるう趣味はない。
時と場合によっては致し方なく暴力をふるうこともあるかもしれないが、今はそこまでする必要もないだろう。
「おーい、起きてください」
肩をゆすってみる、が起きない。
「おい、バカ! 起きろ!」
大声をあげてみたがまるで起きる気配はない。
こいつどんだけ深い眠りについてんだよ。
再びため息をつく。
男ばかりのこの合宿所で少々危機感が薄いのではないだろうか。
襲われても知らねぇぞ。
ふと夕方の出来事を思い出す。
御手洗がまゆりを押し倒している場面。
あれはどうみてもアクシデントだ。
大方まゆりが足を滑らせて転んだのに御手洗も巻き込まれただけだろう。
しかしそんな体勢になれるほどには二人は近くにいたのだ。
男しかいない合宿生活の中、こいつの危機意識はないどころかマイナスだ。
しょうがねえな。
俺はため息交じりにまゆりの隣に腰をおろす。
さすがにこのまま放っておいて他の誰かに襲われたとあっては気分が悪い。
こいつにちょっかいかけるのは俺だけでいい。