第2章 合宿生活はじまります!
食堂に次々とげんなりとした表情の部員たちが現れはじめた。
その表情からして練習はしんどいものだったことがうかがえる。
でもかわいいもので、私がおつかれさまと言いながらカレーをよそってあげると笑顔を見せてくれる子が多かった。
「あ、瀬戸くん。おつかれさま」
「…………」
ちらりと一回こちらを見るだけでカレーの器を持っていってしまう。
あいかわらず黒い長髪はぼさぼさで眠そうだ。
なかなか瀬戸くんは喋ってくれないなあ。
私もしかして嫌われてるかな。
「あんま気にしなくていいっすよ、あいつ髪おろしてる時いっつもあんな感じなんで」
「あ、山崎くん」
「試合中とかは髪あげてばりばり動くのに、普段は省エネとかいって寝てばっかなんだよなあ」
そういって山崎くんはため息をつく。
瀬戸くんのフォローをしてくれているのかな?
髪は派手な色だけど気遣いのできる良い子だ。
「優しいね、ありがとう励ましてくれて」
「は? 別にはげましたわけじゃねぇけど」
山崎くんは照れ臭そうにそっぽを向くとカレーの器をもっていった。
霧崎第一にきてから珍しい反応だ。
なんか心が安らぐなあ。
山崎くんの反応にほわほわした気持ちでいると目の前から舌打ちが聞こえた。
「あ……古橋くん、おつかれさ……」
よそったカレーの器をばっと取ると古橋くんはもう一度舌打ちをしていった。
終始眉間にしわが寄りまくっていた。
この子にはとことん嫌われちゃったな……。
*****
「ねえねえ、なーんかまゆりちゃんと御手洗なかよくなってね?」
そんな言葉を発したのは原だ。
簡易な長机にはカレーの入った寸動鍋と白米が山のようにもってある銀のトレーが並べられている。
その長机をはさんで何の話をしているのか、仲睦まじそうに話している二人が目に入った。
「花宮ぁ、あれいいの?」
「…………」
「ねえ~花宮きいてる~?」
「うるさい、黙って食え」
「え~機嫌悪っ」
俺がそれ以降喋らないとわかると原もあきらめて食べることに専念し始めたようだった。