第2章 合宿生活はじまります!
先生は料理ができないとのことだったので、布団を敷いてきてもらうことにした。
これで料理に集中できる。
時間に余裕ができると気分もあがる。
いつも時間に追われてる社会人たちがどんよりとした顔をしてるのはきっとこのせいなんだろうなあ。
やっぱり計画的に行動するって大事だ。
鼻歌まじりに包丁を握る手を動かしていると、「おい」と声をかけられた。
「あ、花宮じゃん、どうしたの?」
「何かへましてないか見に来たんですよ……にしてもずいぶん楽しそうだな」
「まあね~、やっぱ料理って楽しいな~と思って。んふふ、おいしいカレー期待しててね」
「へえ……」
練習の途中で抜けてきてくれたのかラフな白Tシャツにバスケパンツ姿の花宮。
端正な顔だちに汗でつややかな黒髪はほのかに湿っている。
やっぱ花宮ってかっこいいなあ。
性格は悪いけど、この見た目だとモテるんだろうなあ。
あ、普段は猫かぶって性格悪いの隠してるんだっけ。
だったらなおさらモテそう。
そんなことをぼんやり考えていると、花宮がキッチンスペースまで入ってきて、私のすぐ横に手をついた。
ふいに顔を近寄せられると唇にちゅっとキスをされる。
「?!?!?!」
え、なになになに?!
…………なにごと??
まぶたの重そうな目と視線がぶつかる。
黒い瞳は何を考えているのかわからない。
「ふはっ」
それから花宮は満足そうに息を吐きだすと、バァカと笑って去っていく。
「え、っと…………?」
動かない脳みそを総動員させて考える。
花宮にキス……された?
…………
…………
…………
しばらくして、意味がわかると顔に熱がのぼる。
「はあっ??!」
台所に奇声が響くのはほどなくしてからだった。