第5章 決意
「彼女に何かあれば連絡しろ。では、頼んだ」
「はい。いってらっしゃいませ」
使用人に見送られ黒崎は車に乗り込む
「あのジジイの所までだ」
「旦那様…本当によろしいのですか?」
「貴様は口答えをするのか?さっさと行け」
「申し訳ありません。かしこまりました」
運転手はようやく車を動かす
バタン――――
車のドアが閉まり目の前には大規模な建物が黒崎を見下ろすかのように建っている
「詠人様…!どうなさいましたか!」
「あぁ…クソジジイに話しがあるだけだ」
「会長はただいま体調が優れないようで…」
「そんなのはどうでもいい、さっさと通せ」
「は…はい。こちらです」
黒崎の祖父に仕えるものに案内され祖父の元へ着く
「申し訳ございません。会長、詠人様がお見えになりました」
「……入れ」
部屋に入ると豪華なベッドに横たわる祖父の姿があった
「久しぶりだな。何の用だ…こんなわしの体調が優れん時に」
「それは申し訳ありません。少しお話しがございまして」
「ふ…どうせこのタイミングだ。わしが簡単に許さんようなことだろ?」
感の鋭い祖父に少し苦笑いをする黒崎
「よくご存知で。婚約相手が決まりましたのでご報告を」
「ほう…貴様もあいつと同じ道を歩みたいのか?」
「それはお爺様が強引にしたことですか?」
「あんな簡単に釣られるような女ではこの黒崎家と釣り合わんだろう。当たり前のことだ」
「それはお爺様がこの黒崎家から追いやったことが原因なのではないでしょうか。そうしなければ両親は狂ったりしなかった。狂ったあなたが手を出さなければ…」
「貴様!それ以上言ってみろ!わしがこの手で貴様の人生を水の泡に…」
「そんなことをすれば貴方も一緒に水の泡ですよ?養子さへとっていればそんなことは免れたのでしょうけど。黒崎の存続は危ういものとなるでしょう」
「貴様。いつから口答えなんぞを…!」