第3章 最悪な再会
幸村side
いつものように朝練をし、HR前に片付けを済まし教室へ向かっていると、この学校では見かけない顔とすれ違った。いや、見覚えがある。職員室に行ったあたり転校生なのだろうが、俺はその顔に見覚えがあった。
幸『ひな…?』
数年前。弦一郎たちとテニスをしている時、1人でテニスをしている綺麗な女の子に会った。その子の打つフォームは小学生ながらとても綺麗で、無駄が一切なかった。俺は彼女の何かに惹かれ、一緒に練習しよう。と声をかけてみると、『…いいの?』と遠慮気味に聞いてきた。
弦一郎も蓮二も気になっていたみたいで、一緒にっ!って言っている。それを見た彼女は『うん。一緒にやろう!』と花が咲いたような笑顔で答えた。思えばその時からだったんだろう。俺が、いや俺達が彼女に執着し始めたのは。
〜回想〜
パコンッ…パコンッ…
ボールがリズムよく打たれる。今、ラリーをしているのはひなと弦一郎だ。
『そろそろ…終わりだよッ…!』
バシュッ…!!
ひながそう言うと弦一郎のコートラインギリギリに突き刺すようにボールを打ち、アウトをとる。
真『くそっ…また負けてしまった。』
『ふふっ…私に勝とうなんてまだ早いよ』
柳『ひなはまだまだ未知数だな…。』
幸『でも…絶対勝つよ。俺が。』
『うん。その方がやる気出る。』
強気な俺の発言に、強気で返すひな。オレらの二つ年上で、向上心があって、負けず嫌いで、凛としていて、俺らの憧れで。
『もうこんな時間だね。帰ろうか。』
柳『そうだな。』
真『あぁ。』
幸『じゃあまた明日ね。ひな。』
『うん。また明日ね!精市、弦一郎、蓮二!』
ひなと毎日テニスをする『また明日』を俺達は信じて疑わなかった。その日を最後に、俺たちがひなと会うことはないと知らずに。