第3章 最悪な再会
パコンッと小気味よい音とともに打ち返されるボール。コートに擦れるシューズの音。自分が何度も聞いてきた音。テニスコートを見渡していると見慣れた顔を見つけた。
『幸村…。真田、柳もいる…。あいつら一緒に来たのか。』
幸村、真田、柳の3人とは小さい頃テニスコートで知り合った。1人で打っているところ、声をかけられて一緒に練習をしていた時があった。
『あいつら僕のこと覚えてるかな。流石にもう覚えてないか…。』
なにせもう数年前の話だ。それに今の自分を見て欲しくない。
『そうだ。僕は一人で十分だ。』
そう自分に言い聞かせて屋上をあとにした。
校舎探索も終わったことだし帰ろうと校門へ向かおうとしたら…
『あ…テニスコートの前通らなきゃじゃん。』
立海は部活動が強い。それにテニス部は全国常連の強豪だとも聞いたことがある。部活動に力を入れていることもあってグラウンドはとても広い。校門へ行くには横を通らなければならない。
『……向こうはテニスに夢中だし気づかないよね。』
僕は靴を履き替え、気づかれないように通り過ぎようとした。
?『ひな…?ひなっ!!』
聞き覚えのある声がテニスコートから自分の名前を呼んだ。声の主は今一番会いたくない人…。幸村精市だった。
幸『ひな…?君は佐藤ひな?』
少し息を切らせながら走ってきた幸村。僕の肩を掴み確認するかのように名前を呼んだ。ここで違うと言ってもいずれバレるので素直に答えることにした。
『そうだよ。久しぶりだね。幸村。』
幸『あぁ…。ほんとにひななんだね?あの日突然いなくなるから…。どこいったんだろうって…。』
幸村は安堵の笑みを浮かべて僕にすがりつくみたいに話しかけていた。