第7章 ほころび。
『子虎私にはおとなしく撫でられてくれないんです。』
しゅんとして答えるはる
『ふふふ、きっと遊んでくれてると思ってるんじゃ
ないですか。』
子虎は甘えられる人と、
遊んでくれる人をわけて接する癖があった。
私は前者だったので
本当によくなついてきて。
政宗に感心されたことを思い出した。
『そうだぞ、はる。気にすんな。
だが子虎がここまでなつくのは本当に珍しいな。
よかったな、子虎、甘えられる人ができて』
政宗がしゃがんで
私の胸にへばりついていた子虎を
嬉しそうになでる。
いつもならそのまま私もついでに撫でてくれたんだけどな
そんなことを思いつつ、
書簡を渡し、また安土城に戻った。
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「あれからちょくちょく子虎にあいに来てくれるんですけど
もう匂いが足音でわかるのか
御殿に入るや否やすぐ飛び付いていくんですよ。」
はるさんが嬉しそうに話す。
はるさんよりなついてくれたことが
なんだか嬉しい。
でもそれと同時に黒いもやもやが
わたしの心を覆った。
何を張り合ってるんだと。
この馬鹿らしい考えを心の奥底に押し込んだ。
「ほぉ、子虎がなつくとわな。貴様も料理や針子以外に
取り柄があったのだな。」
信長様が御機嫌に笑う。
「なんですか!料理と針子だけでも
充分じゃないですか。」
あまり本気で怒ってない言い返しをする。
だってその言い方はつまり料理と針子は
認めてもらえてるって事で。
ちょっとうれしかった。
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その後も大半は
鷹から逃げるのに必死で
なんとか信長様が鷹狩りに飽きてくれて
というかはるさんの御腹がなって
「花見弁当が、そんなに食べたいのか」
と、なり、やっと花見へ向かうことになった。