第18章 選択。
「乾杯。」
高らかに杯が掲げられる。
皆うれしそうに極上の酒で喉を潤している。
からからに乾いた喉に
どんなものを通しても何の味もしなかった。
ただひたすらに杯の中の水分を
体内に入れるような感覚だ。
タイムホールの話を聞いてから
あっという間に時間が過ぎ、
気づけばちょうど出現する日、
つまりは政宗とはるの祝言を祝う宴会の日に
なってしまった。
上座にはいつもは信長様が座っているものの、
今日に限っては
白いタキシード姿の政宗と
あの時見せられた蒼い布と淡い淡い布が
アクセントになったウェディングドレスを着たはるが
座っている。
祝言当日は着物でという従来のしきたりに合わせ、
前日にこのような洋装での宴を開いたのだそうだ。
いつか政宗と一緒にーーーー。
そう描いた夢は途方もなく私には
大きすぎたのかもしれない。
「ひな??」
翡翠色の大きな瞳が私をとらえる。
「ん?あっ、すごいね、ほんとに。
美男美女。絵になるね。あっ、家康、お酒ないね。
とってくるね。」
一気にいうと
席を立ち部屋をでる。
パタパタと用意をしている侍女さんに
ひとつお酒を家康のところへ、。、とお願いし
縁側に向かった。
いつもなら自分で持っていくけれど
あれ以上あの部屋で二人の姿をみて
笑っていられる自信がない。
本当はなんとか用事を作ろうと画策したものの
洋装を着るのを手伝ってくれるのは
ひなさんしかいないと
あの瞳に頼まれ、断れずに今に至る。
とんだお人好しだ。
まぁ私だけ参加しないのも
明らかにおかしいから
結果よかったのかもしれないけれど。。。