第6章 交錯
「失礼します」
「あっ!!ひな様お待ちしておりました!!
お座りになって!」
私より、、確か5才ほど年上だった鈴さんが
ぐいと私の肩をもって座らせる。
「すぐ終わるからね。」
鈴さんはほんとにすごい。
それぞれの人にあった化粧や髪を結ってくれる。
この前の大名の謁見の時も
泣きはらす前は本当にきれいに仕上げてくれた。
泣きはらして結果花魁みたいなメイクに
なっちゃったけど。。。
そんなことを考えてる間にも
パタパタとお粉をはたかれ、
化粧を重ねていく。
「あとは髪ね。」
「あっ、私簪持ってなくて。。。何か貸していただいても」
「何恐縮しちゃってるの、どれがいい???」
嬉しそうに出してくれた簪の数々。
朱色のものや黄色、金色、紫色
色とりどりのガラスだまや組紐でつくられた花がついていて
どれにしようか迷う。
「……入るよ。」
声が襖の外から聴こえる。
「まぁ!どうぞ家康様!!!」
振り替えると家康が立っていた。
「……これ、あんたにあげる。」
「へ???」
家康が差し出した手には
ブルーのガラス玉がついた簪。
私がいつもつけている
政宗からもらった首飾りによくあっていた。
「……あんたいつも髪下ろしてるし。今日結うって聞いたから。
あげる。」
「えっ、そんな申し訳ないよ。どうしよう、
えっと。。。今度のお給料で。。。」
「まぁ!さすが家康様!!素敵な簪!
ひな様、さっそくつけましょ!」
鈴さんが私より喜んで家康から
簪をもらう。
「……あんたが支払えるの??」
「え?!そんなに高いの?!どうしよう?!」
慌てているとまたふわっと笑って家康が言う。
「ほんと、いそがしいね、あんた。
あげる。この前苦い薬飲んだご褒美。」
「え?!そんなのむしろ私が身体壊しちゃったのがだめだし
むしろ私がお礼しなきゃ」
「ひな様!!」
私がおどおどしていると鈴さんがちょっと
怒り口調で口を挟んだ。
「差し出がましいようですが!!!
男性からの贈り物はありがたく頂戴するのが礼儀です!
しかも普段あまりお笑いにならない家康様が笑顔で…」
「……普段あまり笑わなくて悪かったね。」
「!!!あっ、いや、その!!」
勢いで思わず行ってしまった鈴さんを
からかうように家康が笑う。