第16章 重ねて
『信長様!!失礼します!』
と威勢のいい掛け声と共に襖が開く。
声に呆けをとられ、
力をゆるめてしまい
あっと思った瞬間おでこに柔らかい感触が触れる。
思わすおでこを両手で押さえ、
開いた襖をみる。
「ここにいるものは
合図の意味もわからんうつけものばかりか。
なぜ中の返事を待たずに襖をあける、猿。」
少し不機嫌そうに信長様がいう。
襖の前には
私の身体を支えて密着している信長様をみて
状況を理解した秀吉さんが罰の悪そうに座っていた。
「しっ、失礼致しました!
まさか夜伽の最中とは!!出直した方。。、」
「ちっ違うから!!!秀吉さん!!
変な誤解しないで!!」
秀吉さんが勝手に妄想を進めようとして
思わず止める。
「違うこともないではないか。
いまからはじめようかと。。」
「信長様!!!」
また、あることないこと言いそうな信長様の
口を押さえる。
「ひな、信長様のお相手なぞ
おそれ多くも光栄な事なのに、なぜ。。。」
「や、だから違いますって!!
というか秀吉さんなんか用事があってきたんですよね?!
ほら!早くいわないと!!」
このまま言い合っても埒が明かないと思い話題を変える。
「そうだ!信長様、小次郎達が。。。」
びくっ!
名前を聞いてどきっとする。
「逃げたんだろう。」
「申し訳ありません。見失いまして、いま政宗と供に
捜索している最中です。
手負いですので遠くにはいかないかと。。。」
「どうせどこかで手当てでもして
逃げたんだろう。」
ちらっと私をみる。
あっ、絶対ばれてる。
「そもそもこの始末は政宗に命じてある。
あやつの好きにするがよい。」
「え?それって。。」
思わず口を挟んでしまった。
「なんだ、不満か?」
「いえ、まったくそういうわけじゃ。。」
「そもそもひな、貴様に言われようと
言われまいと政宗に一任してある。
もしもう一度貴様やはるに何かしたら
話はべつだがな。。」
ゾクっーーー。!
一瞬魔王と呼ばれる由縁の冷たい目を向け
背筋が凍る。