第16章 重ねて
「ひな。。。」
「政宗!!」
部屋の光景をみて政宗が一瞬驚いたかと思うと
すぐに刀に手をかける。
「動くな。」
小次郎が言う。
刀に手をかけた状態で止まる政宗。
「ひなを離せ」
静かな声ながら
この声は政宗の怒ってる時の声だとわかる。
「離せと言われて離すやつがどこにいる。」
余裕のあるような声で小次郎が政宗をあおる。
じりじりと静かな時間が流れる。
ほんと一瞬の時間なんだろうけど
一秒が一時間に感じるほど
長い時間にらみあってるような気がした。
沈黙を破ったのは小次郎だった。
「ひな。」
「へ?? ーーーっ!」
急に私の名前を小次郎に呼ばれて
気の抜けた返事で首を後ろに振りくと同時に
唇に柔らかい感触が伝わって、
一瞬何が起こったのかわからなかった。
いま起こってることを整理している間に
すっと拘束がとかれて自由になる。
体勢が崩されて倒れるのを防ごうとしている間に
小次郎が後ろの二人にさけぶ。
「熊!!!」
「はっ!!」
熊が佐吉を抱え部屋を出る、
小次郎は一瞬出遅れた政宗の刀を押さえて
政宗の懐に入る。
何かを耳打ちしたように見えた。
政宗の目が大きく開くのが見えた。
そのまま風のように縁側の塀の上にかけ上がる。
その間、10秒もいや5秒もなかったか。
私がたおれこみそうな所を
政宗が回り込み支える。
「ひな!!」
「へ?!」
また私の名前を呼ばれて
反射的に返事をしてしまう。
「あいつの仕方覚えるより
俺の口づけのやり方覚えとけ。」
「。。なっ!?、はっ?!何言って!!」
さっきの一瞬の出来事を思い出し
顔が赤くなる。
「お前も、。、。今を生きろよ。」
「!!!!」
そういって優しく笑った月明かりに照らされた顔は
さらわれた時にみたあの顔よりずっときれいで。
すっと塀の向こうに姿を消した。