第16章 重ねて
処置を続けながら、
ふと小次郎を見る。
本当に心配そうに佐吉を見ている。
「そんなに心配するくらい大事なら
こんなことしなかったらよかったのにーーー。」
「あ??」
ー!!!あっ。。
思わず思ったことを口に出してしまった。
「あっ、いや。。だって。。。
正直なにも生まれないじゃない。あんなことしたって。」
「てめぇ、治してるからって調子乗るんじゃねぇぞ。」
どこか政宗に似た目でぎろっと睨まれる。
さっきまで、小次郎にあんなことされて
あれだけ嫌悪感があったのに、
なんとなく仲間を思うような
そんな人間的な面を見たからだろうか、
政宗の弟とわかったからだろうかわからないけど
睨まれてもあのときの感覚にはならなかった。
「いや。その。。。、」
言葉につまってまた沈黙が訪れる。
たんたんと処置を続ける。
もしかしたら殺されるかもしれない、
そうきづいた時にはもうほぼ終わりかけていた。
どうしよう。。。と思っていると
小次郎が口を開く。
「殺さねぇよ。別にお前が憎い訳じゃない。」
「えっ。。。」
思わず小次郎の方を向く。
「なんでかっていったな。
ただ、あいつより遅く生まれたってだけで
なにも持てなかった俺の気持ちなんてお前にわからねぇよ。」
吐き捨てるように言った。