第1章
彼女と過ごす日々は、リヴァイが今までに生きてきたどの時よりも満ち足りていて、これが幸福というものなのかと、柄にもなく思ってしまったほどだった。
だが、そんな宝物のような日々も、長くは続かなかった。
「リヴァイ、急だが明日、の迎えが来る」
部屋を訪れたエルヴィンが事務的にそう告げた。
「・・・そうか」
雨の降り始めた窓の外を眺めながら、リヴァイもまた事務的に返事をした。
初めから決まっていたことだ。のことは預かるだけで、いつかは持ち主のもとに帰ってしまうことは。その時が来ただけのことだ。
「リヴァイ、お前はの事を随分と大切にしていたようだね。正直、意外だったよ。・・・が居なくなるのは寂しいかい?」
伝えるべきことを伝え終えたエルヴィンは、先程までの事務的な口調を弛めると、眉を少し下げてリヴァイを見た。
「・・・・・」
窓の外を眺めているリヴァイは、返事もしなかったし、振り返りもしなかった。ただ、雨に濡れた窓に映るリヴァイの顔は、まるで泣いているように見えた。
その日の夜、リヴァイは初めて、と一緒に眠った。
とはいえ、淫らな行為に及んだわけではない。リヴァイの狭いベッドにを横たえて、その白くて小さな手を握って眠りについたのだ。
そしてやはり、いつもと同じように、夢の中にが現れた。
はとても悲しそうな顔をして、下を向いていた。
伏せられた瞳を長いまつげが縁取っていて、涙に濡れたそれは微かに震えている。
「リヴァイさん・・・私、このまま貴方と一緒にいたい」
コバルトブルーの瞳からポロリと涙がこぼれ落ちて、その華奢な身体がまるで羽のような軽さでリヴァイの腕の中に飛び込んできた。