第1章
「リヴァイさん、いつもありがとうございます」
そう言ってにっこりと笑ったの笑顔は、まるで花が咲いたように美しかった。桜色の小さな唇からこぼれる声は鈴の音のようだ。
「お前・・・なぜ・・・」
話せるんだ、といった顔で唖然としてを見つめているリヴァイの側に、は椅子から立ち上がって歩いてくる。
「ふふっ、びっくりされたでしょう?でも、これは夢の中です。・・・どうしても貴方とお話しがしたかったから」
そう言ってわずかに俯いたの、形の良い小さな耳が赤く染まっている。
「いけなかったでしょうか・・・?」
なかなかリヴァイが返事をしなかったので、は急に悲しげな顔になった。しょげたような顔をして、リヴァイよりもいくぶん低い位置から見上げてくる。
「・・・そんな訳ない。そう思ってもらえて、光栄だ」
リヴァイはその仕草に、嬉しさのあまり今にも卒倒してしまいそうな自分を堪えて、必死に喉の奥から言葉を絞り出したのだった。
それからというもの、はほぼ毎晩リヴァイの夢に現れた。
夢の中はいつも春の日だまりのように優しい光に包まれていて、その光の中でリヴァイとは、紅茶を飲んだり読んでいる本の内容について話したり、他愛もない事を話して過ごした。
そこはとても居心地のよい空間で、心が安らいだ。
が夢に出てくるようになってからというもの、リヴァイはぐっすりと眠れるようになった。地下街時代から、いつ寝首をかかれるか分からない生活をしていたリヴァイには、心の底からリラックスできる時間というものがなかったのだ。
夢の中のは、とても表情豊かで、話す内容も機知に富み、この上ないほど魅力的な女性だった。
普段は椅子に座っているから分からないが、は随分と小柄で、兵団の中でも小柄と言われているリヴァイよりもさらに小さかった。
透けるように白い指が、日だまりの中でパラパラとページをめくる様は、たったそれだけのことなのに、とても美しかった。