第1章
「なぜそう思う。俺だって男だ。バカなことだってするさ」
「いや、お前なら大丈夫だ。女性の同意が無いのに、手を出すような男ではないからね」
「・・・・」
キラキラと、晴れ渡った青空のような瞳で見つめられ、リヴァイはむっつりと口を閉じた。
無理難題を吹っかける時には決まって無邪気な様子を装う、これもエルヴィンの計算の内なのだ。
「ちっ・・・いつまでだ」
「未定だ。ほとぼりが冷めるのを待つしかない」
「・・・」
「では、名残惜しいが私はそろそろ行かなくてはならない」
スタスタと扉に向かって歩いて行くエルヴィンが、ふと足を止めて、ふところから小さな手帳を取り出した。
「そうだ、これは彼女の取り扱い説明書だそうだ。具体的な使用方法も書いてあるが・・・彼女の性格、趣味なども書かれているぞ。いくら人形とはいえ、婦人は丁重に扱わなければならない。よろしく頼むよ、リヴァイ」
そう言ってエルヴィンは、今度こそ部屋から出ていった。
部屋に残されたリヴァイは、手渡された小さな手帳を持ったまま、椅子に腰掛けて柔らかく微笑む彼女をぼんやりと見つめた。