第1章
「ではリヴァイ、ここまでで大丈夫だ。面倒をかけたね」
迎えの馬車にを乗せ終えて、一人馬車から降りてきたリヴァイにエルヴィンが声をかけた。
を部屋からここまで運んできたのは、リヴァイだった。
まるで本物の女性を扱うかのように、大切に大切に運ぶ姿を見て、エルヴィンは胸が苦しくなった。リヴァイのこんな姿を見たのは初めてだったからだ。
「あぁ・・・」
ガラガラと音を立てて走り去っていく馬車を、リヴァイはいつまでも見つめていた。
それから数週間、表面上ではリヴァイは何も変わらないように見えた。
だが、自身の寝室に戻ってもがいないという現実は受け入れ難いものであり、夜になるとリヴァイは、の座っていた椅子に腰掛けてぼんやりと過ごすようになっていた。睡眠も、ほとんど取らなくなった。
あの時、なぜ彼女を攫って逃げなかったのかと、今でも思う。だが同時に、それがどれだけ馬鹿げた考えかということもよく分かっていた。
彼女がどんなに美しくても、命を吹き込まれた不思議な存在であったとしても、やはり彼女は人形なのだ。どれだけ彼女に恋焦がれようとも、人間の女のように一生一緒にいることなどできはしないのだ。